トークイベント「丸平文庫のお人形ー京阪神の伝統美をめぐって」

日本人形というのは、美しく、しかしどこか妖艶で、うっすらと恐ろしく
幼い頃に家にあったその存在は、忘れられない生き物として記憶の中に残っている。
わたしは自分のお雛様が大好きだった。きれいで優しく、きりっとしていて
ひなまつりの歌を口ずさみながら飾りつけする時間は愛おしいものだった。
1年で1ヶ月間だけの春先の和室の賑わいは自分だけのための華やかさで、
地味な自分には荷が重いという気持ちの反面、自分が初めてお化粧をしたときのように、ワントーン明るい空間が
恥ずかしくもあり、心躍るものでもあった。
しかしそれは少し親戚のおばさんにも似ていて、美しさと恐ろしさは、一緒に存在するのだろうかとも思っていた。
京セラ美術館でのトークイベント。
京都で江⼾時代に創業した⼈形司「丸平⼤⽊⼈形店」の人形たち。
そこには京都あるいは阪神間の文化があり、職人さんたちの息遣いがあった。
表現することとしないことの選択。心を宿すことの意味。
文化といえば長い歴史の積み重ねかも知れないけれど
そこには人々の日々の生活そのものがあった。
生と無生のあいだに。
感情を表現されず、静止した人形は、いうまでもなく人間ではなく人形。
なのに繊細で、写実的で、小さな世界がい息づいている。

四季折々に、毎年の干支に、人形も絵画も様々な顔をみせる。
日本文化の中だけではなく、我々の生活にも生き続けてほしい、と切に思った。